【FCバルセロナ】バルサはアイデンティティを取り戻した?
3月22日ラ・リーガ20-21シーズン第28節、アウェーのアエタノ・スタジアムで行われたレアル・ソシエダとの試合は今シーズン最高と思える内容で6-1と大勝を収めたバルセロナは近年、失われつつあったバルサスタイルを取り戻したと感じさせるゲームを魅せました。
システムと配置
ソシエダとのゲームでは3DFを採用してサイドDFのデストとジョルジ・アルバを高い位置にポジショニングさせてデンベレを前線中央で起用していました。
これは前節4-1で勝利したウエスカ戦と同じシステムとスターティングメンバーで、クーマン監督は現状での選手の配置と組み合わせ、戦術に最適策を見つけ出したと思われます。
対戦相手のソシエダは昨シーズンに比べると調子を落としていますが、GKを含めたビルドアップから攻撃を組み立てるバルサと似たようなスタイルを構築しているチームです。
前線から連動してパスコースを限定し、相手陣内でボール奪取を狙うソシエダに対してバルサは伝説のペップ・グラウディオラが率いた当時にプレーしていたバルデスのようにGKテア・シュテーゲンからパスを繋ぐスタイルで相手のプレスの遅れを創り出してビルドアップに成功していました。
決して良いプレーとは言えませんがグラウンダーで中央へのパスを試みたGKテア・シュテーゲンのボールが相手に渡り、ピンチを招く場面がありましたがペップ時代にも見られた現象で哲学を貫くには避けて通れないミスだと監督が賞賛した時代に戻る意思を感じさせるプレーだったと思います。
中盤のエリアまでボールを運んだ後もDFラインを押し上げてのボールポゼッションから相手陣内に侵入するバルサスタイルを取り戻し、攻撃の場面ではメッシがバイタルエリアでゴール方向を向いてプレーする機会を多く創り出せていました。
シーズン当初はビルドアップが上手く行かずにメッシが中盤に降りてボールを捌く役割を担っていまいたが、ソシエダ戦はピボーテのブツケスと3DFの中央で起用せれているデ・ヨングのドリブルでの持ち上がりによってメッシが2列目でパスを受ける場面を圧倒的に増やすことに成功し、中央でのチャンスメイクから両サイドの選手が相手の背後へランニングする事で相手DFを崩す状況を何度も創り出していました。
1点目はメッシのキープから背後を狙ったジョルジ・アルバへパスが通り、中央で合わせたデンベレのシュートのこぼれ球をグリーズマンが決めました。
2点目は中央をドリブルで前進するメッシから右サイドのデストがエリア内に走り込んでフリーでシュートを決めます。
3点目は左サイド深くに潜入して相手DFラインをえぐったジョルジ・アルバのゴール近くからのグラウンダーでの横パスに飛び込んだデストが相手DFのクリアーに寄せる形でゴールに押し込みました。
中央のメッシ、サイドのデスト、ジョルジ・アルバが絡む形で相手DFラインを完全に攻略したと言えるでしょう。
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個の能力も!?
ソシエダのボール保持者へのディフェンスが甘かった部分は否めませんが、4点目は中盤でフリーになったブツケスから相手背後のスペースを狙ったメッシに絶妙なパスが通り、相手GKがタイミングを取りづらいアウトサイドで合わせたシュートは見事だったと思います。
ディフェンスに関しても、ボールロスト直後の切り替えが改善されてソシエダが自陣でボールを奪っても効果的にパスを繋ぐことが出来ないように素早くプレシングを掛けてボールを奪い返す事に成功していて、以前のように簡単にカウンターからシュートまで持って行かれる場面はほとんど無くなりました。
ソシエダは唯一イサクが中盤に降りてパスを引き出した場合に起点を作ることが出来て、危険な場面を創りましたが、最終的にはGKテア・シュテーゲンを中心に失点を阻止していました。
5点目のゴールはサイドでななく中央のスペースを巧く突いたデンベレが一人で相手DFを掻い潜って独力で決めた得点でした。
中盤でテンポ良くボールが循環する事でプレッシングの連動性が上がらず、相手2ラインにわずかなズレを生じさせる事で選手個人が持つ能力も発揮できる好循環を象徴するシーンでした。
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現バルサスタイルの象徴!?
開幕当初から基本となる戦術を構築できずにチャンピオンズ・リーグではベスト16でパリ・サンジェルマンに敗れたバルサですが、3-6-1とも言える選手の配置で選手の能力を融合させる事が出来たのではないかと思います。
DFライン3選手では中央のデ・ヨングと左のラングレがドリブルで前進する事でファーストDFを無力化し、中盤ではブツケスを経由させてのビルドアップが基本だった状況からペドリがパスを引き出す事により相手はパスコースを限定できなくなっています。
シーズン当初からスターティングメンバーに抜擢されてきたペドリが当初のバランサーとしての役割以上に現在はパス循環の起点と中盤でのディフェンスで中心的な役割を担うようになりバルサの現スタイルが確立されたと思います。
以前は中盤でゲームをコントロールしたいが為にデ・ヨングをインサイドMFで起用するゲームが多かったシーズン前半とは違い、ドリブルの能力を活かしながら前進して中盤でもプレーするアヤックス時代のスタイルを発揮し始めた2選手の起用法と能力が現状のスタイルを確立する鍵となったと分析しました。
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シーズン終盤へ向けて!?
日本時間4月6日(火)早朝4:00キックオフ予定のバリャドリード戦は代表ウィーク明けもあり、メンバーを変えてくる可能性が高いと思われますが4月11日にレアル・マドリードと対戦するクラシコでは同様の選手とシステムを採用すると思われます。
ピケがケガから復帰した場合は3DFの中央か右に入る以外は現状のベストメンバーであるソシエダ戦のスタメンがベストな布陣となるでしょう。
レアルのジダン監督はバルサのビルドアップをコントロールして相手陣内でボールを奪う戦術を採用すると予想します。
バルサの両サイドの攻撃力を減少させるために4-3-3でワイドにウイングを起用する可能性が高いと思います。
クーマン監督はバルサの両サイドがDF的なポジションを取らざる負えない場合はプランBを用意する必要があります。
現状のバルサのポゼッションのポイントは2シャドーに入っているメッシとグリーズマンが相手選手の立ち位置によって自由にポジションを移動して中央のパスコースを増やし、近距離での影響力を利用してながらアタッキングサードでは両サイドが選択肢を増やす構造だと解析しました。
中央で前を向いた状況を創り、両サイドに選択肢がある事が大量得点に繋がっている最大の要因だと思います。
プランBでは中央のデンベレが相手サイドDFの裏を狙い、センターDFを釣り出したスペースにグリーズマン、ペドリが侵入するのが面白いのではないかと思っています。
ペドリがいつもより高い位置にポジションを取るため、ブツケスが引き付けた中盤のスペースを攻略する役目はDFのデ・ヨングのタイミングを見計らったポジショニングになります。
最終ラインから上がったデ・ヨングの対応をレアルの中盤選手に迫らせて、メッシへのパスコースを空ける事が出来れば、両サイドが上がる時間を創り出して中央のスペースと両サイドの上がりが可能になり選択肢が増えるでしょう。
個人能力が高いレアルとの対戦ではソシエダ戦程の質的優位性は図れませんが、現バルサの選手の距離感を保ってプレー出来れば、レアルはボールへのプレスを強めざる負えなくなり、連動した動きが相手DFを崩すポイントになると思います。
チーム戦術の構築を成功させたバルサはレアル・マドリードとの大一番を制することが出来れば、4ポイント差で追う首位アトレチコにプレッシャーがかかり、勢いを増して終盤に逆転優勝を勝ち取る可能性がかなり高まってくると予想します。
今後のラ・リーガが更に盛り上がるであろう”バルサスタイルの復活”と更なる進化の必要に迫られた時のプランC、プランDを自身で創造しがら20-21シーズン終盤のバルセロナ戦を楽しんで観てはいかがでしょうか!?
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