リベルタドーレス2021決勝パルメイラスvsフラメンゴ~2022UAEクラブワールドカップ
2020シーズン王者パルメイラスと2019シーズンを制したフラメンゴが対戦し、2シーズン連続してブラジル勢対決となったコッパ・アメリカ2021決勝戦を分析しながら2022UAEで開催予定のクラブワールドカップの戦いを展望してみます!!
※昨シーズンの記事もご参照ください
コッパ・リベルタドーレス2021決勝パルメイラス2-1フラメンゴ
ウルグアイの首都モンテビデオの歴史あるセンテナリオ・スタジアムで開催された2021シーズンの決勝戦は昨シーズン同様にブラジル勢同士の対戦となりましたが、南米サッカー特有の激しさが強調された昨シーズンのパルメイラスvsサントス戦よりフットボール的な要素が多い決勝戦となりました。
ゲームは前半早い時間帯にパルメイラスがベイガのゴールで先制し後半中盤のエース“ガビゴル”ことガブリエル・バルボーサの同点ゴールでフラメンゴが同点として延長戦に突入します。
昨シーズン劇的なゴールを決めたブルーノ・ロプースと同様に延長戦から先制ゴールのベイガに代わって出場したFWデイヴェルソン・アコスタのゴールで近年では成し遂げられていない連覇でパルメイラスが南米チャンピオンに輝きました。
RCフラメンゴ
2019シーズンはポルトガル人監督ジョルジュ・ジェズス(現ベンフィカ監督)が38年振り2回目の南米王者に導いたフラメンゴはクラブワールドカップ決勝でリバプールに敗れて涙を呑みましたが、ブラジル国内で一番サポーターが多いとされるクラブの伝統を築いたジーコが活躍した時代には東京で開催されていたトヨタカップで1981年に優勝して世界一の称号を手にしたチームです。
現レナット・ガウショ監督は選手時代に右ウイングとしてブラジルを代表する選手で2年後のトヨタカップにグレミオのエースとして優勝に導き、後にフラメンゴでもプレーした強烈な個性の持ち主でした。
ブラジルでは主力選手がライバルクラブに移籍する事が頻繁に起こり、ペレ=サントス、ジーコ=フラメンゴに象徴される時代からリオの名門フラメンゴ、フルミネンセ、バスコ・ダ・ガマの3チームでプレーしたロマーリオなど我が強い選手の先駆者とも言えるレナット・ガウショが監督となってチームをまとめる姿は未だに想像できません。
2019優勝時の選手が主体の現チームは相手DFからのロングボールで左サイド深くまで侵入を許して失点を与えてしまいます。
元セレソンの左サイドDFフェリペ・ルイス、センターDFで新加入のダビド・ルイスの守備範囲を簡単に攻略されて先制点を失う苦しい展開となりました。
地元リオ・デジャネイロで開催されたオリンピック2016では右サイドのチャンスメーカーとして優勝に貢献したガブリエル・ジェズスはヨーロッパでの挑戦から国内に復帰後はゴールゲッターに変身して2年前の優勝にも貢献しています。
当時キープレーヤーだったMFブルーノ・エンリケは今大会も出場していますが前回ほどのインパクトを残せずにキャプテンとして出場したエヴェルトン・リヴェイロや出場機会が与えられなかった10番ジエゴ同様に元来のポテンシャルを発揮しきれていないと予測します。
ジーコが中心にブラジル国民を魅了したチームはDFにレアンドロ、エジーニョ、ジュリオ・セーザ、ジョジマール、ジョルジーニョ、MFにジュニオール、アロイージ、レオナルド、FWにチッタ、ヌネス、レナット、ジーニョ、ベベットなどブラジルサッカーを象徴する選手がプレーしていて現在のチームとは比較できないクオリティーを感じたのを思い出します。
SEパルメイラス
ブラジル勢では1992、93年のサンパウロ、大会では2000、01年ボカ・ジュニオール(アルゼンチン)以来の連覇となったパルメイラスを指揮するのは昨年と同様にポルトガル人のフェレイラ監督です。
2019フラメンゴ優勝のジェズス監督から3大会連続でポルトガル人監督が南米を制している事実は近年の大きな変化と言えるでしょう。
昔から組織のヨーロッパに対して個人と即興性の南米と言われてきたサッカー界は現時点でも極端な変化は有りませんが、組織的戦術に選手の能力を組み合わせるヨーロッパの主要リーグに選手の質と変化のスピード感が現代サッカーの根幹をなしていると考えると欧州のサッカーが世界をリードしているのは間違いないでしょう。
ポルトガル人監督の薫陶を受ける両チームの戦いでしたが、ヨーロッパCLもしくは主要リーグで見るプレーモデルを元にした連動した組織的戦術は感じることは有りませんでした。
欧州のゲームでも負担が影響してフィジカル能力が減少する時間帯は連動性を確保できずに局面ごとの展開がゲームに与える影響が大きくなりますが、南米ではフィジカルコンタクトを嫌う傾向が強いブラジルサッカーはゲーム開始から組織的連動性よりも判断と創造的インテリジェンスを含めた個人能力がゲームに与える影響が大きいと感じます。
連覇を成し遂げたパルメイラスも前線から連動したプレッシング戦術などは見られずに自陣に引いてあるていどのブロックを造る堅守が基本戦術だと思います。
個人能力が高い選手を集めたセレソンではボールポゼッションへ切り替えてボールロストを避ける戦術も採用しますが、ブラジルサッカーは元来から個人の推進力と判断スピード、チャンスに賭ける意思などが融合してカウンターから得点を奪うのが得意です。
現在のパルメイラスにはスターと言えるだけの選手は存在しないと思いますが、堅守を基本とした戦術から速攻を中心にしたスタイルで勝機を探ると分析します。
現チームはGKウェヴェルトン、キャプテンでパラグアイ代表のゴメスを中心にした堅守、先制点を挙げたベイガや左サイドのスカルパ、ラファエル、ダニーロの献身性とブラジル人らしい右サイドのドゥドゥ、スピードが武器のホニの選手個人のクオリティーがチーム戦術だと感じます。
パルメイラスがサンパウロ州選手権だけでなくブラジル全土でクラブの存在感を強めた1990年代はDFアントニオ・カルロス(ザーゴ)、ホッキ・ジュニオール、ロベルト・カルロス、マジーニョ、MFセザール・サンパイオ、ルイス・エンリケ、アマラウ、フラウビオ・コンセイソン、ジャウミーニャ、FWエバイール、エジムンド、リバウド、エジウソンなどセレソンの中心選手が在籍して試合を支配するスタイルで勝利するチームでしたが、現在の戦力を比べると結果の要因は献身性と分析するのが妥当だと思います。
2022UAEクラブワールドカップ展望
本来は日本で大会がスタートしている予定でしたがコロナウイルスの影響を受けて2022年2月4日に開幕戦を迎え、日本時間2月13日(日)25:30決勝戦キックオフ予定の2021クラブワールドカップを展望してみます。
昨シーズンは準決勝から登場して中南米王者ティグレス(メキシコ)、3位決定戦ではアフリカ王者アル・アハリ(エジプト)に敗れて大会を終えたパルメイラスは厳しい南米予選を勝ち抜き、再び世界一に挑戦する権利を手に入れました。
サッカー王国ブラジルの名門ライバルクラブを押しのけて出場権を手に入れたプレッシャーと各大陸間のレベル差が以前に比べると少なくなった今日の世界情勢を実感させられた前回大会から成長した姿を見せるには優勝を義務つけられる難しい大会になると予想されます。
今大会もアフリカ王者アル・アハリ(エジプト)と北中米王者モンテレイ(メキシコ)の勝者と準決勝で対戦するのは楽観視できる状況ではないでしょう。
実力を分析するとヨーロッパ王者チェルシーが優勝候補と考えられますが大会出場回数ではオセアニア王者オークランド・シティが10回目、アル・アハリが7回目の常連クラブと今回の出場が2回目以上で初の世界一を狙うチームとの対戦になります。
昨年のティグレス戦と同様に準決勝から主導権を握れずに厳しい試合展開を予想されますが、堅守からのカウンターに活路を見出し決勝戦に進出すると予想します。
戦術的要素が多くなった現代サッカーの最高峰ヨーロッパ王者のチェルシーとの対戦は今までの戦い方を変えずに個人能力に賭けた局面での優位性で勝利を目指すスタイルで戦う事が予想されます。
前線からのプレッシング、後方からデザインされたビルドアップによるゲームコントロールでトゥヘル監督率いるチェルシーは試合のペースを握ると分析します。
パルメイラスは攻守で少人数での連動性も分断されて個人能力によるリスクを伴うチャレンジや偶発的に起こる現象をきっかけにゴールまで結び付けられるかがポイントとなるでしょう。
リベルタトーレス決勝戦のチーム状況を考えると右サイドのドゥドゥがキーマンになりそうです。
チェルシーは前線からプレスをかけてパルメイラスのビルドアップに対して中盤のインサイドでボール奪取を狙うと予想します。
サイドDFからの展開で相手の制限を突破する状況を創れればパルメイラスが勢いを増してペースを掴む展開も考えられます。
事前に準備された戦術でゲームコントロールから勝利を目指す欧州王者に意図的偶発性とプライドで対抗する南米王者パルメイラス、もしくは他大陸のチームも含めて初の世界一を争う2021シーズンのクラブワールドカップの展望を独自の視点で検証して予想しながら楽しむ事を推奨します。
過去の予想記事や分析も参考にして頂ければ幸いです。