コパ・アメリカ2021 アルゼンチン代表1-0ブラジル代表 決勝【分析】
FCバルセロナで数々の栄光を手に入れてきたリオネル・メッシが伝説の序章とも言える2008北京オリンピックで金メダルを獲得してから13年の年月が流れました。
2006年ドイツ・ワールドカップ時点から代表メンバーに選ばれていたメッシがアルゼンチン代表として主要大会で5回目に挑んだ決勝で初タイトルを獲得したコパ・アメリカ2021ブラジル大会の決勝戦、アルゼンチン代表vsブラジル代表を観戦した感想を述べてみようと思います!!
※決勝戦の予想スタメン記事に興味がある方はこちらをご覧ください
アルゼンチン代表スターティングメンバー
GK:マルティネス
右サイドDF:モンティエル
センターDF:ロメロ
センターDF:オタメンディ
左サイドDF:アクーニャ
右サイドMF:デ・マリア
インサイドMF:パレデス
左サイドMF:ロ・チェルソ
FW:メッシ
FW:ラウタロ
選手のコンディション的な要素も関係あると思いますが準決勝のコロンビア戦から5選手を変えて4-3-3-から4-4-2にスターティングメンバーを変更したスカローニ監督の選手起用と配置はバランスを最優先した采配だったと分析します。
ディフェンス時のDF,とMFの2ラインでバランスを取りブラジル代表にスペースを与えないポジショニングからスタートして左サイドでスタメンに抜擢されたデ・マリアの個人能力と経験値で優位性を発揮するのが狙いだったと思います。
ブラジル代表スターティングメンバー
GK:エデルソン
右サイドDF:ダニーロ
センターDF:マルキーニョス
センターDF:チアゴ・シウバ
左サイドDF:ロディ
アンカー:カゼミーロ
インサイドMF:パケタ
右サイドFW:エヴェルトン
センターFW:リシァリルソン
左サイドFW:ネイマール
ブラジルで言うボランチほどゲームを組み立てる能力では劣るカゼミーロをアンカーに配置して左フレッジ、右のパケタに守備でのタスクを与えて、こちらもバランス重視で臨んだブラジル代表チッチ監督の攻撃でのプランはネイマールのタレント性に頼った采配だったと分析します。
デ・マリアが先制ゴール!!
ホームのブラジル代表がボールを握る時間帯が長いと予想していましたが、立ち上がりから若干ではありますがアルゼンチンがボールとペースをコントロールしていたと感じます。
ヨーロッパのトップレベルで活躍する選手が多数出場する決勝戦ですが、ポジショナルプレー的な戦術的ポジショニングよりも局面の激しい競り合いが中心で偶発的要素が高く、いかにも南米的なゲーム展開だったと思います。
アルゼンチン代表は予想通りメッシが与える影響が大きく、激しい攻防の中盤でもボールが彼を経由する事で選択肢を増やしていたと思います。
ブラジル代表は感覚として培ってきた周囲の選手との連動性を伴う状況判断が強みであったはずですが、選手間の距離感を分断されて局面での優位性で同等のポテンシャルを有するアルゼンチン選手に後手を踏んでいる感じを抱きました。
ディフェンス面では激しいボディーコンタクトは両チームに見られますが、ブラジルは予測を含めた組織で守るのに対してアルゼンチンはコンタクト時の激しさで相手の攻撃を封じる伝統的スタイルを継承している内容だと分析しました。
カウンターでも個々のポテンシャルで威力を発揮する両チームですが、互いにファール限り切りのプレーで芽を蕾む事に長けていて決定機はなかなか訪れませんでした。
先制ゴールが生まれた場面は精度が高いカウンターと言うよりは若干のスペースを与えた状況下で背後を狙うロングパスの処理を誤ったブラジル代表の左サイドDFロディのミスからデ・マリアが見事なボールコントロールからループシュートを決めてアルゼンチンが先制に成功します。
北京オリンピック決勝戦でナイジェリアを破り、金メダルを獲得したU-23アルゼンチン代表の決勝戦。カウンターで飛び出したデ・マリアがGKの頭上を見事に破る決勝戦が脳裏に甦るようなゴールでした。
選手と配置を変えて臨んだ後半!!
リードを許したブラジル代表はMFフレッジに代えてFWフィルミーノを投入して変化を加えて流れを引き寄せようとアクションを起こしました。
選手の配置を4-1-4-1風にして右サイドFWリシャリルソン、左サイドFWエリヴェルトン、トップにフィルミーノ、トップしたにネイマール、パケタを配置して攻撃的な選手を増やしてチャンスを増やそうと試みます。
ボランチで起用されているカゼミーロがゲームを組み立てる役割を担えない為に攻撃のスイッチを入れるのはネイマールに頼らざる得ない状況に変化はほとんど現れずに効果は見られません。
中盤の激しい攻防でイエローカードを受けた選手を下げてディフェンスの安定を図りたいアルゼンチン代表と攻撃的な選手を増やすだけで大きな変化を加えられないブラジル代表、両指揮官の采配で勝敗のポイントと感じた場面はMFパレデスに代わってロドリゲスが投入された直後のブラジル代表の攻撃でした。
途中交代で入った選手の感覚のズレが原因だと思われるディフェンスによって中央のスペースを空けてしまったが為に生まれたブラジル代表の攻撃は右サイドにポジションを移したリシャリルソンに決定機を与えましたがGKマルティネスの好セーブで難を逃れました。
メッシに群がる選手達と悲壮感漂うネイマール
後半終了間際にMFデ・パウルの意表を突くスルーパスから決定機を迎えたメッシはGKエデルソンとの駆け引きでゴールには結び付けられませんでしたが試合終了のホイッスルが鳴るとアルゼンチン代表の選手たちは次々にキャプテンの元に集まり歓喜の輪ができました。
敗れた選手たちが放心状態になるのは当然の事だと思いますが、仮にブラジル代表が優勝した場合にネイマールの元にチームメイトが集結する光景は想像が難しいと感じます。
彼らがチーム内で過ごしてきた経緯が結果として現れた瞬間だったのかもしれません。
プレーでもチームへの貢献度での周囲から認められて結果だけが伴ってこなかったメッシと共に戦った選手は彼が持つ能力の恩恵を受けている事を感じながらプレーして彼のためにもタイトルを手に入れる為に全力を尽くした事が想像できる感動的な場面でした。
アルゼンチン代表の未来予想図!?
2022カタール・ワールドカップへ向けたターム構成は今大会のメンバーを中心に選出されるのは当然だと考えられます。
南米チャンピオンとなったアルゼンチン代表ですが同時期に開催されているEURO2020を分析すると世界チャンピオンへの道は厳しい道のりになるのが現実でしょう。
2016年のブラジル大会で決勝戦までたどり着いた時も戦術的な要素よりも選手のポテンシャルに頼った戦い方でトーナメント戦の利点による影響が大きかったと思います。
選手のポテンシャルに偏った戦い方で勝利を目指したフランス、ポルトガルがトーナメント1回戦で敗れたように現代のフットボールでは戦術的なプレーモデルの確立と選手の特徴を活かした戦略、試合展開を分析して柔軟な戦術変更を行える組織的な補完性と変化が必要な時代になったと分析できます。
歴史上でも最高の選手と評価されるメッシを中心とするのは当然だと思いますが、一発勝負の偶発性だけでワールドカップは優勝できないでしょう。
センターDFは現状よりもレベルが高くフィジカルとメンタル以上にインテリジェンスを特徴とする選手の発掘が必須だと感じました。
パサレラ、アジャラのようの資質を持った選手を見つけ育てる事でレベルは一段上がると思います。
中盤のディフェンス能力が最優先ではありますが、レドンドやマスチェラーノのように試合の流れを感じられる選手が理想だと考えます。
アタッカーにはメッシ以外にも独力で局面を打開してチャンスを創り出せるディバラのようなタレントを現在のチームに組みくみながら全体のバランスを保つような戦術が構築できればヨーロッパ勢にも対抗できると推測します。
王国ブラジル復活の道!?
世界を魅了したフッテボールを当たり前のように披露していた時代は終わり、選手のクオリティに頼った精度が高いカウンターが勝負強さの鍵となってしまった現代のセレソンですが、個々の能力でも他国を凌駕する存在ではないのが現状だと思います。
局面での対人スキルで勝る選手達が即興で繰りなすプレーは芸術的でしたが、現セレソンではネイマールに攻撃を依存していて、ピッチに立つ選手のクオリティで相手に勝っているとは言えないでしょう。
GKエデルソン、センターDFのマルキーニョス、チアゴ・シウバはワールドクラスですが、他のポジションではタレント不足が否めません。
FW以上の攻撃力を備えるサイドDF,、中盤のフィルターと成りながらもパスでゲームを組み立てるボランチ、常にゴールを期待できるストライカー、サイドで局面を打開してチャンスを創出するドリブラー、決定的なスルーパスでチャンスを演出して自らの得点能力を備える10番のようなタレントがいてこそのセレソンだと思います。
2006年のドイツ大会に出場したロナウジーニョ、カカ、ロナウド、アドリアーノのように圧倒したタレントのユニットこそがブラジルサッカーの最大の魅力だと思います。
育成年代からチームトレーニングによってレベルアップした平均的な選手ではなく、指導者が育てることが出来ないようなタレントを育む環境を取り戻した先に王国の復活が期待できると確信しています。
ヨーロッパに高額で売れるタレントを育てるのではなく、国民とサポーターに幸せを運んでくれる才能を開花させる育成と環境の復活が今のブラジルサッカーに必要な最優先事項だと感じています。