【FCバルセロナ】20-21ラ・リーガ第30節“クラシコ”1-2敗戦vsレアル・マドリード戦を考察!?
日本時間4月10日早朝4:00にキックオフされた20-21シーズンのラ・リーガ第30節“クラシコ”暫定2位バルセロナがアウェーで宿敵レアル・マドリード(暫定3位)と対戦して1-2で敗れた試合を考察してみようと思います!!
※戦前の予想記事に興味がある方はこちらをご覧ください
スターティングメンバー
3-6-1を採用したクーマン監督は一定のバランスを手に入れたと思われる3DFのセンターでプレーしていたデ・ヨングを中盤に上げてアラウホをスタメンに抜擢しました。
グリーズマンが先発から外れて相手DFとMF間でスペースを利用するよりも、後方の守備に比重を置いた弱気な采配だと思います。
3DFを採用する事も考えられたジダン監督ですが、メンバー入りできない選手が続出しているDF陣でもCLのリバプール戦で成果を見出した選手を信頼して同メンバーで4DFを形成、唯一の変更は右FWで出場してゴールも決めたアセンシオに変えて走力とバランスで攻守に貢献するのが特徴のバルベルデを起用した慎重な采配でスタートしました。
センターDF/アラウホ、右サイド/バルベルデ
ゲーム序盤はバルサがビルドアップを試みて、レアルが前線からのプレスで攻撃方向を限定して中盤でボールを奪うのが狙いと思われる展開でスタートしました。
前節まで3DFの中央でドリブルでの前進を織り交ぜながらビルドアップの中心にいたデ・ヨングが最終ラインではなく中盤でパスを引き出す役割を担いますが、アラウホが同様の能力を持ち合わせている訳ではなく、ブツケスとペドリでパスコースを創っていたバランスも失ってビルドアップでストレスを感じながらのプレーが見受けられました。
一方、前試合から唯一の変更で出場した右サイドのバルベルデは期待に応えるプレーを魅せます。
自陣の右サイドでパスを受けたバルベルデは相手の予想を上回るスピードでボールと共に前進してバルサDF陣は攻撃方向を制限する事が出来ない状況を創り出しました。
ノープレッシャーでゴール方向にボールを運ぶバルベルデに対してバルサDF陣は中央への進路を塞ぐディフェンスを取らざる負えない状況で右サイドにできたスペースに右サイドDFのルーカス・バスケスがフリーでランニングしてパスを受けます。
ほとんどプレッシャーが無い状態でゴール前に走り込むベンゼマを見ながら正確なグラウンダーのクロスを供給するのはこのクラスの選手には難しい技術ではないでしょう。
後手に廻ったバルサDFに対してニアサイドに走り込んだベンゼマは絶妙なヒールシュートで先制点を決めました。
先制したレアル・マドリードはプランを遂行!?
先制したレアルは相手にボールを握らせても当初のプランであったかのようにカウンターでペースを創る戦い方に徹します。
中央、もしくは右サイドに流れてベンゼマが起点になるプラン1と左サイドでスピードとドリブルを駆使して起点になるヴィニシウスが能力を発揮する場面が増えて行きました。
特筆すべきはモドリッチの前方への配球の質だと思います。相手はプレッシャーを掛けているつもりでいてもアウトサイドなどを駆使して絶妙なタイミングとコースにパスを通す技術は時間と空間で優位性を創り出してチャンスを演出していました。
モドリッチから右サイドのスペースを突くスルーパスを受けたヴィニシウスが成長を感じさせるような為から二人のDFの間を縫う突破で得たファールから2点目が生まれます。
ゴール正面やや左側から逆の右サイドを狙ったと思われる名手クロースのFKはGKへのコースを空けるために敢えて壁に隙間を作って離れて立っていたデストの背中に当たって狙いとは逆の左方向へ飛んでいきます。GKのテアシュテーゲンはさすがに反応する事ができませんが、ゴールカバーに入ったジョルジ・アルバがヘディングでクリアを試みるもタイミングが合わずにゴールに吸い込まれました。
後半からグリーズマンを投入
後方の安定感を優先した犠牲により先発を外れていたグリーズマンを後半開始からデストに変えて投入、トップでプレーしてスペースを消されていたデンベレが右サイドに廻ります。
左サイドの高い位置にポジションをとったグリーズマンと関係性を築きたいメッシは前半に比べると相手ゴールに近い位置を意識してポジショニングしていると感じるようになりました。バルベルデに対応されていたジョルジ・アルバも前方のグリーズマンに一度ボールが入る事で相手の視野の外からランニングを仕掛けられるようになりミンゲサのゴールを演出して魅せました。
右サイドに入ったデンベレもオン・ザ・ボールでの能力を発揮できるようになりバルサペースと思われますが、バルサの攻撃で最も危険なバイタルエリアでメッシがゴール方向へプレーする場面と選択肢を増やす相手DF背後へのランニングは改善されずに僅かなスペースでプレーするメッシは少しのボールコントロールのズレからボールロストする場面が見受けられました。相手の後手から得たFKも悪天候の影響を受けたのか精度を欠いたキックになってしまいます。
終盤にはレアルは疲労感がある選手に変えてフレッシュな選手を投入してフジカルインテンシティの維持を基本に守備を固めるプラン、バルサは停滞する攻撃を個人の特徴で変化を加えたい選手交代で同点ゴールを狙いますが結果は1-2のまま敗退する事になりました。
守備の安定感を重視した采配でもプレーモデルの違いが結果に!?
慎重な采配が多く見受けられる両監督ですが、カウンターに活路を見出す割り切ったゲープランで攻守での貢献度からバルベルデを起用して思い通りのバランスと結果を手に入れたレアルのジダン監督に比べて、守備での人数を確保したい消極的な考えからビルドアップの起点となっていたデ・ヨングを一列前でプレーさせて後方にディフェンスでの安定性を求めてアラウホを起用したバルサのクーマン監督の微妙な価値観がゲーム内容と結果に影響を及ばした形になりました。
ディフェンス時だけでなく相手に脅威を与える為に選手の能力を最大限に引き出して組織の力にしたジダン監督と攻守で好調を維持し始めた選手間の補完性を無視してディフェンス面を重視して、自身が望むボール保持時のゲームコントロールを犠牲にしたクーマン監督の差が顕著に表れた内容と結果だったと思います。
レアル左サイドのヴィニシウスの現在のパフォーマンスに脅威を感じての判断だったかもしれませんが、ビルドアップでの優位性を発揮していたデ・ヨングの能力には期待するが、チームとしての連動と前方での優位性を犠牲にしてカウンアー対策に比重を置いた采配にもかかわらず、相手の狙い通りにカウンターからゴールを奪われたのは監督のゲームプランの崩壊とも捉えられます。
ビルドアップから丁寧に数的優位を維持してボールを前進させて相手に対応を迫らせた状態でメッシにボールを繋げることが出来れば両サイドのオーバーラップとトップのデンベレ、シャドーのグリーズマンにもスペースが生れたと思わずにはいられません。
来週に控えるコパ・デル・レイのA・ビルバオとの決勝戦に敗れる事があれば来季のクーマン監督の続投は難しいでしょう。
リスクマネージメントをしながらも自分たちのストロングポイントを発揮する勇気とバランス感覚に秀でた人物でなければバルサの監督を務めるのは難しいでしょう。
全体のバランスを維持しながら試合ごとに微妙な調整を加えてチームを構築し、結果を残すことが求められるビッククラブの監督は非常に難しいミッションを与えられているのを実感できる伝統の“クラシコ”となったのではないでしょうか?