パルメイラスvsサントス コッパ・リベルタドーレス決勝~クラブワールドカップ・カタール2021/2
南米王者を決めるコッパ・リベルタドーレスが日本時間1/31に行われました。2020シーズンの決勝戦はブラジル・サンパウロ州の名門クラブ、サントスFCとSEパルメイラスの対戦でした。
国別の優勝回数はアルゼンチンの25回に次いで2番目に多いブラジル(20回)が近年は優勝する確率が上がってきていますが、同国同士の決勝戦は2018のリーベル・プレートvsボカ・ジュニオールスのアルゼンチン対決、ブラジル同士の対戦は2006インテルナショナルvsサンパウロまで遡る稀に見る決勝のカードとなりました。
コッパ・リベルタドーレス
サッカーの歴史の中でヨーロッパに唯一、対抗できる文化を持つ南米の王者を決めるリベルタドーレス杯は文字通り南米サッカーを象徴する大会です。
華麗なボールコントロールとサンバのリズムでゲームを支配するブラジル、激しいチャージと突出した個人能力を活かして勝利を捥ぎ取るアルゼンチン、組織と個人能力を融合させた強固なディフェンスから驚異的な得点率で勝利に導くストライカーを擁するウルグアイの世界的に強豪国と呼ばれる3ヶ国と、戦術的な戦いを得意として選手のレベルも高いコロンビア、ハードワークを基本に堅守から勝利を目指すパラグアイも近年では上位を狙えるレベルに位置して、伏兵的なチリ、エクアドルのクラブも過去に優勝経験がある大会でゲームの内容よりも勝利以外は価値が無いと思われる大会とも言えます。
国別優勝回数
25=アルゼンチン
20=ブラジル
8=ウルグアイ
3=コロンビア
3=パラグアイ
1=チリ
1=エクアドル
クラブ別優勝回数
7=インデペンディエンテ(アルゼンチン)
6=ボカ・ジュニオールス(アルゼンチン)
4=リーベル・プレート(アルゼンチン)
3=ナシオナル(ウルグアイ)
3=サンパウロ(ブラジル)
3=サントス(ブラジル)
3=グレミオ(ブラジル)
パルメイラスvsサントス
3回(1962、63、2011)の優勝経験がありペレ、ネイマールを擁して世界的にも有名なサントスFC(キング・カズこと三浦和良選手がプロデビューしたクラブ)と1999年に1度の南米チャンピオンになりましたがブラジル国内での知名度が高いSEパルメイラスの対戦となった2020シーズンの決勝戦はリオ・デ・ジャネイロのマラカナンスタジアムで開催されました。
サントスFCは港町サントスで創立されたクラブでサッカーの神様と呼ばれたペレがプロデビューしてから最初の引退(北米リーグのニューヨーク・コスモスで復帰)までプレーした世界的なクラブです。
2011優勝時はネイマール(11番)、ガンソ(10番)を擁してクラブ・ワールドカップ決勝戦ではペップが指揮してメッシ、シャビ、イニエスタがプレーした歴史的なチームと対戦しました。
現在はクラブが財政難に陥り、決勝進出は予想外の快進撃だと伝えられています。
一方のSEパルメイラスはサンパウロ州の州都にイタリア系移民のより設立されてイタリア系の企業がスポンサー(パルマタット=乳製品、ピレリ=タイヤ、フィアット=自動車)に着く傾向が高くサポーターも富裕層が中心で経済的にも恵まれた上品なクラブと言えます。ちなみにクラブカラーの緑と白はイタリア国旗の赤を抜いた色で構成されているそうです。
カンペオナット・ブラジレイロ10回、カンペオナット・パウリスタ23回の優勝を誇るパルメイラスは1999年に南米王者としてトヨタ・カップ(インターコンチネンタルカップ、トヨタがスポンサーとなり南米とヨーロッパのチャンピオンが東京・国立競技場で世界一を決める大会※晩年は横浜国際で開催されました)に出場してデイビット・ベッカム擁するマンチェスター・ユナイテッドと対戦しました。
※この試合は筆者が会社の先輩から誘いを受けて旧国立競技場のゴール裏、前列から3段目ほどの席で観戦してゲーム展開を読むような事はできませんでしたが、斜め後ろの席で野球の松坂大輔投手が観戦していたのが印象的でした。
今回のリベルタドーレス決勝戦は前途したように勝利のみに執着した必要以上に激しい接触プレーが目立つゲーム内容で交代出場したブルーノ・エンリケ・ロプース選手が後半のアディショナルタイムに劇的なヘディングシュートを決めてパルメイラスが優勝しました。
特筆するのはサントスFCの主力選手として決勝戦にまで勝ち残った21番ディエゴ・ピトゥカ選手が今シーズンから鹿島アントラーズに加入して日本のJリーグで観ることが出来る事でしょう。
※テクニカルディレクターのジーコさんが獲得を熱望したレフティーで攻守に渡り複数のポジションでプレー可能なポリバレントな選手
パルメイラス、クラブ・ワールドカップへ向けて!?
今回のリベルタドーレス優勝を経て2月からカタールで開催予定のクラブ・ワールドカップへ向けたパルメイラスのスターティングメンバーを考えてみました。
GK:ウェヴェルトン
右サイドDF:ホーシャ
センターDF:ルアン
センターDF:ゴメス
左サイドDF:ビーニャ
トップ下:ベイガ
右サイドFW:ルーカス・リマ
センターFW:アドリアーノ
左サイドFW:ホニ
準決勝を勝ち抜き、決勝戦でヨーロッパチャンピオンのバイエルン・ミュンヘンと対戦する状況での予想をしてみました。
ポルトガル人監督のアベル氏は戦術的な引き出しが多くあると思われますが、ブラジルサッカーに馴染みが深い4-3-3(中盤の配置はブラジル的にはボランチ1、インサイドMF2は定番)で予想しましたが、可変する配置で対抗する可能性も高いと感じています。
シーズンが終了していないのでブラジルでよく見られる大会限定的な短期間のレンタル移籍は難しいと思われるのでリベルタドーレスを戦ったメンバーがそのまま参加メンバーになると推測できます。
FWアドリアーノは私の記憶が正しければシャフタール・ドネツク(ウクライナ)時代にチャンピオンズリーグの試合で史上最多の1試合で5ゴールを決めた選手でフィジカル能力に優れた印象を受けました。
キャプテンのMFフェリペ・メロは良くも悪くもブラジル人的な選手で能力は高いが、精神的な安定感に欠ける選手です。2010南アフリカ・ワールドカップの準々決勝オランダ戦では優位な試合展開の中で相手選手の腹部を意図的に踏みつけて一発退場でブラジルの敗退に関与して戦犯扱いを受けた有名選手です。
注目はMFルーカス・リマで左利きでセレソンの10番を背負ったこともある選手ですが現状のパルメイラスではスタメンでは起用されていませんが、大舞台で違いを創出するのに期待したいタレントです。また、決勝ゴールを決めたブルーノ・ロプースも切り札的な起用でゲームに影響を与えられる可能性が高いと思われます。
ボールポゼッションでゲームをコントロールするプレーモデルを採用していない為、バイエルンがポセッション率を高めて押し込む展開が予想されますが、効果的なカウンターを繰り出して局面でディフェンスを打開する事ができれば勝利の可能性は上がるでしょう。
まずはティグレス(北中米カリブ海王者)対蔚山(アジア王者)の勝者と戦う準決勝で自信を得られるゲーム内容で勝利を収めて、決勝戦に向けてポジティブな雰囲気を創る事がクラブチャンピオンへの一番のポイントだと思います。
※ホニは2017年にアルビレックス新潟でプレーした日本に馴染みがある選手です。
パルメイラスvsマンチェスター・ユナイテット1999年トヨタ・カップ
ここからは筆者が生で観戦したトヨタ・カップを記憶などを頼りにパルメイラスについて書きたいと思います。
同じサンパウロ州のライバルチーム、コリンチャンスは庶民のチームでサポーターは荒くれ者、選手も個性が強い、我儘な集団の印象とは真逆で、上品で洗礼されていても力強さに欠ける印象が少し変わったのが1992年頃からのパルメイラスです。
イタリア企業のスポンサー、パルマラットが後ろ盾になり当時サンパウロFCが国内を席巻していた時代に国内の代表級選手を次々に獲得してブラジル/サンパウロの選手権を連覇したチームは以前の印象を覆す強いチームでした。
DFにはロベルト・カルロス、アントニオ・カルロス(現鹿島監督ザーゴ)。MFセザール・サンパイオ、ジーニョ、ルイス・エンリケ、アマラウ、フラウビオ・コンセイソン。FWリバウド、エジムンド、エバイール。監督レオンとブラジル版ドリームチームとも言える陣容で国内を席巻していました。
※Jリーグがスタートした1993年に横浜フリューゲルスはセザール・サンパイオ、ジーニョ、エバイールの3選手(ブラジル代表)を獲得して監督にレシャック(元バルセロナ)を招聘、山口素弘、前園真聖、遠藤保仁などを擁して日本サッカーに影響を与える可能性を感じさせるチームが存在していました。
1993年のトヨタ・カップは劇的な勝利でヨーロッパ王者に輝いたマンチェスター・ユナイテッドに注目が集まり、ネビル、スコールズ、バット、ベッカムのファーガソン監督の息子達と呼ばれたアカデミー出身選手とギグス(ウエールズ代表)、スタム(オランダ代表)、シルベストル(フランス代表)を擁して現監督のソールシャール(ノルゥエー代表)もスタメンで出場していました。
対するパルメイラスは後にジュビロ磐田の監督に就任したブラジル代表でワールドカップを優勝するルイス・フェリペ・スコラーリ監督に率いられてGKマルコス、左DFジュニオール、センターDFホッキ・ジュニオール、MFサンパイオ、ジーニョ、アレックス、FWパウロ・ヌネスのブラジル代表勢に加えてFWアスプリージャ(コロンビア代表)、DFアルセ(パラグアイ代表)がスタメンで出場する注目の試合でした。
毎年、ヨーロッパチャンピオンが注目されて南米王者が前評判を覆す結果や試合内容が多かったトヨタ・カップ、1990のACミランvsナシオナル・メデリン以降は欧州勢が試合を支配して南米勢が試合に勝利する雰囲気がありました。
1992年のサンパウロvsバルセロナなどは歴史的なクライフ監督率いるドリームチームにテレ・サンターナ監督が率いてライーが2ゴールの活躍で優勝する名勝負や、翌1993年はレオナルド、トニーニョ・セレーゾ(鹿島アントラーズに馴染み深い)の活躍で連覇した歴史が印象的な大会でした。
ゴール裏の低い席で観戦していて遠い側のゴール前の状況はほとんど良く見えない状況での観戦でしたが、前評判を覆してパルメイラスがゲームを支配すると予想していた私の考えを大きく上回るユナイテットの実力に驚かされました。
右サイドからキックの精度とルックスで有名選手になったベッカムのセンターリングはゴール裏からでも綺麗に見えたのを覚えています。
オールドファンで時間が有る方は当時の映像をお楽しみ下さい!!