“ペップ”グラウディオラの憂鬱!? 20-21CL決勝マンチェスターC vsチェルシーを考察!!<前編>
2021年5月29日コロナウイルスのパンデミックと世界が戦う中、非日常化した生活を過ごす人々の一つの喜びと希望と成り得るUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦が行われました。
ポルトガルのエスタディオ・デ・ドラゴンで開催されたファイナルでチャンピオンになったのは18-19シーズンのリバプールvsトッテナム以来の、プレミアリーグ対決を制したチェルシーが9年ぶり2度目のヨーロッパ王者に輝く結果となりました。
サッカー界の歴史に刻まれる魅力的なフットボールで世界を席巻した“ペップ”バルセロナが最後にCLを制した10-11シーズンから10年の歳月を経て再び欧州最高峰の舞台に戻ってきたグラウディオラ監督の戦いを考察してみようと思います!!
マンチェスターC vsチェルシー前半
両チームのスターティングメンバーと選手の配置で若干の意外性を感じさせたのは各メディアで言われているマンチェスターCのアンカーがロドリ、フェルナンジーニョではなくギュンドアンを抜擢した程度だと思います。
ボール保持から活路を見出す“ペップ”と決定機を創り出す1つ手前の戦術に独特の感性を感じさせるトッヘル監督が選んだスターティングメンバーからファーストプランを推測してみましょう。
崩しの部分と中盤のポゼッションにフォーカスした選手起用を優先した“ペップ”シティーはボールを握り相手を動かし、崩しのフェーズを狙う視点から左サイドDFジェシチェンコ、インサイドMFにベルナウド・シウバ、フォーデン、左FWにスターリングを起用したと考えられます。
対するチェルシーのトーマス・トゥッヘル監督は昨シーズン、パリSGで決勝進出しながらもバイエルンに敗れましたが2年連続でCL決勝戦に進出する予想を上回る結果でファイナルにたどり着きました。
ボールを握るシティーに対してDFラインのサイド裏をトップのヴェルナーが突く攻撃でチェルシーが思惑通りの流れを引き寄せた立ち上がりだと思います。
ゼロトップのデ・ブルイネを中心に流動的な連係と相手DFラインを広げる効果を期待して左FWスターリングを先発で起用したシティーもボール保持では狙い通りの展開ですが、前線中央の連動したイマジネーションを感じさせる場面が乏しく、左サイドからの崩しでフォーデンがフィニッシュしたよな理想的な場面を数多く創り出すには至りませんでした。
皮肉なことに相手DFラインの裏を取った決定的な場面はGKエデルソンからのロングパスで抜け出したスターリングがボールコントロールを失って相手DFにクリアされた場面が最大のチャンスだったと言えるかもしれません。
前線からプレッシングを行い、ポゼッション率を上げてゲームコントロールを狙うシティーですが相手GKまでの積極的なプレシングは控えていたと分析します。
しかし、得点が生れたのはGKからサイドへのフイィードをきっかけに数的不利を創られて同サイドへのカバーにより吊り出されたセンターDFが埋めるべきスペースを右サイドにポジショニングしていたハフェルツが中央にできたスペースに走り込み、マウントの見事な状況判断とプレー精度から中央のスペースを突いてゴールに繋げました。
チェルシーが1-0で終えた前半ですがスコアーに反映された内容だったと分析します。
“ペップ”の戦略!?
ピボーテにロドリ、フェルナンジィーニョではなくギュンドアン、インサイドMFにフォーデン、シウバを起用した”ペップ”はボールポゼッションを基盤にゼロトップのデブライネと二人のインサイドMFが流動的に動くことで相手DFを釣り出す狙いがあったと思われます。
ビルドアップ時には後方にウォーカー、ストーンズ、ディアスを配置して幅と運ぶドリブルで時間を創り左サイドDFジェシチェンコのポジショニングでボールの抜け道を確保してピボーテ起用のギュンドアンを含めた前線の流動性、相手サイドDFを引き出す付箋としてスターリング、マフレズの両ウイングを起用したと推測されます。
設計された経路は正確性こそ増しますが、予期せぬ事態の対応では後手を踏む場合が多々あります。
一方、トッヘル監督は状況を判断して対策を準備し、自身が望んだシナリオではなくとも相手の出方に応戦する戦術でプランを構築し、自チーム選手の能力を活かして勝率を上げる可能性を信じた采配だったと思います。
各種媒体の評論で記述されていますが、相手DFの背後を突く動きに乏しく攻撃に幅と深みを創り出せなかった事がシティーの敗因と考えられます。
トッゥヘルの戦略!?
相手DFライン裏のサイドへのランニングとボール奪取からの速攻時に人数を掛けてゴールへ迫り、攻守の切り替え時に優位性を発揮する狙いが鑑みえるチェルシーですが、思い通りのゲーム展開に持ち込み、マンチェスターCのプレッシングを逆手に取ったカウンターから相手センターDFを引出し、ハフェルツのゴールで先制に成功します。
GKからサイドへのパスが起点となっているのでデザインされた崩しとは思えませんが、センターDFを同サイドに引出し、逆の右サイドにいたハフェルツが絶好のスペースを突き、絶妙なパスを配給したマウントの感性は見事だと思います。
今シーズンの対戦で2戦2勝のメンタル的優位性も少なからず影響したと推測します。
<つづく>