FCバルセロナ2020-21シーズン開幕!!新監督クーマンの戦術とスタメンを考察!?
12年ぶりに無冠に終わったバルセロナは新監督にオランダ代表クーマン監督を引き抜き、新たなフェーズを迎えようとしています。
以前から燻っていたフロントと選手との確執を表すようにクーマン監督から敬意を欠く容で戦力外通告を受けたFWスアレス(ウルグアイ代表)や、数々の栄光を共有してきたMFブツケス、DFジョルディ・アルバを売却する事も容認した監督の行動が決定打になった可能性が高い、メッシが退団を表明するなど波乱の幕開けとなったバルセロナとクーマン監督の2020-21シーズンを開幕前に考察します。
バルセロナとクーマン
クラブの基を築いたクライフ監督のドリームチームで主力として一時代を築いたクーマンは監督になっても自身がプレーしてヨーロッパチャンピオンになった戦術を趣向していると推測できます。
クライフはボールを保持していれば、主導権を握ってゲームをコントロールできるとの考えからフィジカル的で非ボール保持時の戦術と考えていたプレッシング戦術とは逆の発想で、ピッチを広く使いテンポ良くボールを動かして相手守備陣の隙間を突いて攻撃を仕掛けるバルサらしいスタイルを確立しました。
同時期にはサリーゴ・サッキがサッカー界に革命をもたらした、連動した守備で前線からプレッシャーを掛けてスペースを奪い前進してボールを奪うプレッシング戦術が浸透しだして、戦術の一大ムーブメントが起きていた時代に、ボールテクニックこそがサッカーの最大の魅力と言わんばかりにフィジカル重視ではなく、技術を持った選手にパスコースを複数創るポジショニングとテクニックを指導して攻撃的なサッカーを展開しています。
「ボールを持っていれば守備をする必要が無い」との哲学を全面的に押し出して、当時では珍しい3DFを採用してクーマンはセンターDFとして強力で正確なキックを武器に最後尾からゲームをコントロールする役割を担っていました。
このチームの要は現マンチェスターC監督のペップ・グアルディオラでクーマンの前方、中盤の底にポジションを取りゲームメイクでバルサを操っていました。
クーマンはパワーこそ持ち合わせていましたが、2人共スピードがあるタイプではなくディフェンス時に難点がある選手を後方中央に配置させていたのはクライフが自身の哲学を信じていた証でしょう。
オランダ代表のチームメイトFWファンバステン、FWフリット、MFライカールトは技術だけではなくフィジカルも持ち合わせて、前途のサッキ監督率いるプレッシング戦術のACミランで活躍していたのに対して、技術とインテリジェンスで対抗したドリームチームはバルセロナ市民の誇りであり、クーマン自身もバルサの戦術を体現していた喜びを感じながらプレーしていたと推測できます。
そのクーマンが夢であると語ったバルセロナの監督に就任したからには攻撃的なポゼッションサッカーを復権させてくれると願わずにはいられません。
近年バルセロナのスタイル
ペップ監督時代はプレシング戦術で革命を起こしたサッキ監督以来と言われる変革をサッカー界にもたらしました。
「70%ボールを保持できれば80%の試合で勝利できる」バルサの哲学を証明するかのように、圧倒的なポゼッションでメッシの希有な才能を開花させて数々のタイトルを勝ち取り、世界中を魅了しました。
メッシをゼロトップに起用して中盤のパス回しでも技術を活かし、ゴール前の危険なエリアに前を向いてプレーできる戦術を駆使してメッシの得点能力も開花させました。
中盤にはシャビ、イニエスタ、自身がバルサBから抜擢したブツケスを、ウイングにはペドロ配置してディフェンスの要にはプジョル、GKにはバルデスを起用してカンテラ育ちの選手を中心にクライフイズムを進化させて史上最高とも評価されるチームを完成させます。
相手に研究されて中盤を経由しないロングボールを多用されると、前線からのプレッシングと前進守備を強化して圧倒的なポゼッションを維持しました。
毎年、選手を入れ替え、戦術的な微調整を繰り返して進化を遂げていたペップ・バルサですが晩年には運動量が減ったメッシを戦術的に機能させるのが難しくなり、相手の対抗策に屈する試合が増えて、ペップは自ら辞任する道を選びました。
ビラノバ、マルティーノと監督が変わりましたが、国内リーグやカップ戦ではタイトルを保持できても、ヨーロッパの戦いでは苦戦をしいられる状況が続きます。
ブラジルの至宝ネイマールを、翌年にはスアレス(ウルグアイ代表)の獲得に成功したバルセロナはクラブOBのルイス・エンリケを監督に抜擢して再びヨーロッパチャンピオンに帰り咲くことに成功しました。
メッシ、スアレス、ネイマールの南米トリオMSNがプライベート同様にピッチでも能力を最大限に発揮してゴールを量産することになります。
しかし、バルサスタイルであるポゼッション志向よりもMSNの力による攻撃が多く、カウンターでの得点比率が増えたのは周知の事実です。
エンリケ監督は前線からのプレッシング時はスアレスの走力に頼り、即時奪回ができない場合は後方に下がってブロックで守備をする戦術を採りいれてカウンターのスペースを確保しました。
MSNの内、左サイドのネイマールを守備時には後方に戻らせて4-4のディフェンスで守備ブロックを形成しています。
試合数が多いバルセロナでは選手の疲労を考慮してエンリケ監督はローテーションで選手を起用しましたが、メッシをベンチに置いたまま敗れた試合をきっかけにエンリケ監督とメッシが衝突する出来事も起こりました。
メッシのモチベーションを下げる訳にはいかずエンリケ監督はスタメンでフル出場を認めてタイトルを獲りましたが、監督の考えがチームに反映するのが難しくなったのも事実だと思います。
続くバルベルデ監督もクラブOBですがビッククラブでの指導歴はなく、バランス重視の采配でバルサ伝統の4-3-3のフォーメーションを断念します。
メッシ、スアレスを除いた4MF、4DFで守備のバランスを整える戦術を採用しました。
リーグ、カップのタイトルは保持しましたが、CLでは2年連続で大逆転を喫して、クラブが望む結果を出せずに2019-20シーズン途中で解任されてしまいます。
この頃はすでに選手とフロントとの確執が表面化されていて、クラブ内に問題があったのは確実だと思われます。
クライフ信者のキケ・セティエン監督を後任に選び、ポゼッションスタイルへの回帰を目論みますが、リーグはレアル・マドリードに制されて、CLでは準々決勝でバイエルン・ミュンヘンに2-8で歴史的な敗戦を喫して、またしても監督が解任されてクーマン新監督の招聘に至ります。
バルサ2020-21開幕スタメン予想!?
移籍濃厚なFWスアレス、MFビダルを除いた9月12日時点でバルセロナと契約している選手を前提で開幕戦のスタメンを予想しました。
GK:テア・シュテーゲン
右DF:セルジ・ロベルト
センターDF:ピケ
センターDF:ラングレー
左DF:ジョルジ・アルバ
ピボーテ:ブツケス
トップ下:メッシ
右FW:デンベレ
ゼロトップ:グリーズマン
左FW:コウチーニョ
攻撃的なポゼッションスタイルを目指す前提で、右サイドDFのセルジ・ロベルトを中盤よりの内側に配置して、大外には右FWデンベレで幅を取ります。
左FWコウチーニョもインサイドにポジショニングして大外は左サイドDFジョルジ・アルバが幅と深みを創る役割です。
GKテア・シュテーゲンから丁寧にビルドアップが基本ですが、ハイプレスで相手が前に出てきた場合は右のデンベレへのロングパスと、インサイドの高い位置にポジションを取るコウチーニョへのグラウンダーのパスを狙いたいところです。
ブツケスとデ・ヨングは自在に高さを変えて、相手のプレッシャーラインにギャップを生み出しながらボールを引出してゲームを組み立てる役割を担います。
グリーズマンは守備時にはファーストディフェンダーとしてプレスの初動を促しますが、攻撃時にはメッシのスペースを創るべく中盤、左右のスペースに動く流動的なゼロトップです。
右ハーフスペースでメッシにゴールへ向かってプレーさせるのが最大の狙いですが、左ハーフスペースにコウチーニョ、左大外にジョルジ・アルバが攻撃参加する既定コンビネーションも有効な崩しになると思われます。
ポゼッションの配置のイメージは最終ラインに3選手、右サイドにデンベレ、左サイドはジョルジ・アルバ、中盤にブツケツとデ・ヨング、前方のハーフスペースにメッシ、コウチーニョ、グリーズマンのうち2選手がポジションをとり、1選手がフリーマンとなってボール付近に数的優位を創り出すのが狙いです。
オプション、プランB、プランC
右サイドDFにはネルソン・セメド(ポルトガル代表)の起用も十分にあり得ます。インサイドには入らずに幅を取る役割を担いそうです。この場合は右FWにはインサイドでプレーするメッシ、グリーズマン、コウチーニョとの組み合わせが予想されます。
左サイドDFジュニオール・フィリポはより守備重視の戦いが必要な場合の起用が考えられます。
センターDFはウムティティの去就が気になりますが、E・ガルシア(マンチェスターC)など有望な若手をバックアップとして確保したいのが現実でしょう。
ピボーテにはクーマン監督の発言の通りデ・ヨングの起用が考えられます。
新型コロナウイルス陽性で合流が遅れたピヤニッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ代表)も候補の一人でセルジ・ロベルトの抜擢も可能だと推測しています。
インサイドMF、通称インテリオールはバルサのポゼッションスタイルを確立するために重要なポジションになりました。(ドーリームチーム時代はピボーテの位置からペップがゲームを組み立てましたが、現在はブロックの中にいかにして侵入するかがポイントで、より高い位置にポジションをとるインテリオールのインテリジェンスが相手守備組織を攻略する重要なポジションだと考えます)
静のメッシ、動のグリーズマン、コウチーニョのポジションにはリキ・プッチ、ペドリの若手と復帰が噂されるチアゴ・アルカンタラ(バイエルン・ミュンヘン)の移籍が実現すればレギュラー争いは激化すると思われます。
左FWにはスペイン代表の最年少得点記録を更新したアンス・ファティの起用も可能性が高いと思われます。
インサイドよりアウトサイドでのプレーが得意な選手なので、ジョルジ・アルバとのコンビネーションで数的優位を創出して左サイドの攻撃のオプションとなることは間違いないでしょう。
※ネイマールのように単体での突破が持ち味の選手とタイプが若干異なり、アンス・ファティは単体でも仕掛けられますが、バルサのカンテラ育ちでコンビネーションを活用するスタイルなのでアラバとの相性は良いと予測しています。
この場合はインサイドにはピヤニッチなど味方を活かす術を知る選手の配置が有効的だと思います。
スアレスが抜けるセンターFWは得点力とポストプレーに特徴がある選手の補強が必要だと考えられます。ラウタロ・マルティネス(インテル/アルゼンチン代表)、メンフィス・デ・パイ(リヨン/オランダ代表)の獲得が噂されますが、お薦めは29歳と年齢が高いのが難点ですが、プレースタイルはバルサとマッチすると思われるラウル・ヒメネス(ウルヴァーハンプトン/メキシコ代表)です。
他に考えられる補強候補は左サイドDFガヤ(バレンシア/スペイン代表)、FWオカンポス(セビージャ/アルゼンチン代表)などが挙げられます。
最大のオプションは3DFかもしれません。現スタメンでもポゼッション時は3DF状態なのですが、ドリームチームでリベロ(3DFセンター)で攻撃にも参加したクーマン監督はポゼッション時には2DFのリスクを冒してでも中盤の選手をリベロ(有力候補はデ・ヨング)に配置した3DFにチャレンジするかもしれません。
バルセロナ開幕戦
CLに出場して過密日程でシーズン開幕を迎えるバルセロナは日程調整が施されて第2節の久保建英選手擁するビジャレアルと日本時間9月27日に予定されています。
9月13日深夜2:00ジムナスティック戦
9月17日深夜2:00ジローナ戦
開幕前のゲーム状況で開幕戦のスタメンが決まると思いますが、今シーズンの結果次第ではメッシの移籍は避けられないプレッシャーと、メッシ依存から抜け出したいクラブ、監督の2面性を持つチーム状況で、クレを納得させる内容と結果を迎えることができるのか?
開幕前からバルセロナの動向に注目が集まります。